<2012年9月2日>
釜山市中心から車で約50分、釜山で実施されるツアー訪問予定地である『古里原発』に下見に行きました。
訪れてみて最初に驚いたのは、原子力発電所と地域住民の方々が生活している場所の距離の近さです。
1号機は、1978年4月に韓国で初めて建設された原発です。運転開始から公表されているだけでも129回の事故や故障を起こしています。今年の2月には全電源喪失の事故が起きていたにも関わらず、その事実が一ヶ月もの間公表されなかったということなどあり、地元住民や韓国の環境団体などによる、廃炉を求める運動が広がっています。そんな中、今年8月には運転再開。
海も空もとてもきれいで、地元の人々が釣りをしたり、市場で買い物をしたりする日常の風景の中に、とてつもなく違和感がある建物『原発』がありました。
古里原発のすぐそばには、周囲の住民は無料で利用できる大きなスポーツ文化センターがあり、
それに隣接して建てられている施設があります。『古里原発広報館』です。
誰でも無料で入れるこの施設は、人類のエネルギーの歴史や、原子力発電の“仕組み”や“安全性”、“必要性”について学べる展示物がたくさんあります。
何も知らず訪れたら、「原発はいいね!安全だね!」と、思ってしまうような内容でした。
中でも気になった展示は下記。
福島事故の後に付け足されたものです。
日本と韓国の原発の違いについて記載させたパネルです。
「日本は地震が起こるけれど、韓国には地震がないから安全です」
「韓国の原発は日本の原発よりも優れた技術だから安全です」
というような内容です。
韓国の電力会社や政府には、福島事故の教訓をこういうパネルを作ることではない方法で、きちんと生かしてもらいたいものです。
思えば福島原発の事故が起こるまでは、私は原子力発電について全く知識もなく、安全か必要かなど学んだり考えたりする機会はありませんでした。
事故が起きてから気がついて、学び始めて考え始めたのでは遅いことがたくさんあるということを、福島原発の事故から学びました。古里原発から半径30キロメートル内には、約32万人の人々が住んでいます。もし事故が起きたとき、彼らが避難する場所は確保できるのでしょうか?子どもたちは安全に暮らせるでしょうか?電力会社や政府はその時、きちんとし対処ができるのでしょうか?
原発の問題を、日本国内だけの問題ととらえずに、世界全体の共通した問題であると考え発信することが私たちピースボートの役割だと思います。今クルーズでは韓国から約400人の方々が乗船します。船内でも寄港地でも、韓国と日本の原発における共通した問題を探りながら、日韓共に「原発に頼らない社会」をどうやって作るかを、一緒に考えられる機会をたくさん作れればと思いました。
(田村 美和子)